9/26


つい先日の話なんですが。
てゆか、23日。
アルバイトから帰ったら、部屋の中に大量の届け物がありました。
どーやら俺の母親が、留守中勝手に来訪したらしい。
部屋の中とか、綺麗になってるし。
ああっ。
痴漢物DVDとか、綺麗に並べられているっ?
大丈夫だよ、おかあちゃん。
俺、電車の中で、女子高生に痴漢とかしないから。
むしろムカつくね。
なんであーゆーふーに、言葉遣いが汚いんだろう?
8回殺してやりたいよ。

ま、そんなんはともかく。
テーブルの上に置かれた、お中元の余りらしい素麺とか、かなり昔の洗剤とかに混じって。
タッパーが二つ、置かれていました。
中身は母親が作った、きのこご飯。
てゆか栗も入っていたので、秋ご飯と命名。
あとは、きのこの煮付け的なもの。
俺の母親は、山菜取りとかが好きでして。
この時期になると、山を歩くんだよね。
しかし、母親の料理を食ったのなんて、何年ぶりだろう?

タッパーの中に入っていた秋ご飯。
ちょっとだけ、気持ちが震えた。
だから今日の日記、センター寄せね。
雰囲気、雰囲気。

俺の母親は、男運が悪いらしく。
男のチョイスで、失敗ばかりしている。
俺の父親は、小金を持っているだけのクズ野郎だったし。
その後も、何回も辛い目にあってる。
そんでも俺や妹を育ててくれたし、まあなんか笑って生活しているわけだ。
『女手一つで』とか、よく聞くセリフだけどさ。
都会に住む人と違って、仕事とかも選べない田舎で暮らしてて。
相当な苦労があったわけだ。
自業自得とか、切り捨てるのは簡単だけどさ。
俺の母親の頑張りだけは、本物だったと思う。

じゃあ俺は?
その母親に、何かしてやれたのだろうか?
好き勝手に生きて、軽口ばっかり叩いて。
勝手に結婚したと思ったら、勝手に離婚して。
あげくに、30過ぎてフリーターだよ。
うわ、文章にすると、クズ度合いが増す。

こんな俺に、この秋ご飯を食う価値がありますか?
どんな思いで、この飯を作りましたか?
辛かったですか、苦しかったですか?
俺の感謝は、届きますか?
考えてみれば、いつもそうです。
俺は周りの人に、助けられてばかりいます。
例えば、夜遅くにかかってくる、友達からの電話。
例えば、街で見かけた、掃除をするおばさん。
例えば、アルバイト先で出会った、俺を気に入ってくれる年下の上司。
例えば、物凄くくだらないものを見つけて教えてくれる、友達からのメール。
例えば、HPで見る日記。
みんな、そんなつもりは無いのかもしれない。
みんな、生きていくだけなのかもしれない。
でも。
でもさ。
それが俺の考えすぎだとしても。
頑張れと、そう聞こえる。
頑張れ。
それは、俺が言わなくてはいけないことなのに。
頑張れ。
それは、俺が伝えたい事なのに。
いつも周りから聞こえてくる。

生きていてもいいですか?
そう問いかけた、大好きな歌姫が居る。
その答えを誰もが知っているから、誰も問えない。
そう答えた、大好きな歌姫が居る。
多分、歌姫は知っている。
俺も、貴方も。
答えを見失う時はあるけど。
自分がどれだけ可哀想か、自分にアピールする時はあるけど。
それでも、皆知ってる。
タッパーの中身が、その答え。

母親が届けてくれた、秋ご飯。
多分、みんなの周りにも有るよ。
最近忙しくて、ちょっと忘れがちだったけど。
俺もそれを届けたいと、思っていたんだっけ。
それを届けてくれた、みんなに。

俺の感謝は、届きますか?

9/19

らんらららーん。
ブロッコリー!


てゆことで、貴方に内緒にしていた事があります。
本当は、墓の下まで持っていくつもりだったんですか。
いつまでもだまし続けるのは辛いので、今日、告白します。
日記のネタも無い事ですし。

実は俺、33歳にして、恋をしました。
とうてい手の届かない彼女ですが、それでも良いのです。
彼女の姿を見るだけで、彼女の歌声を聞くだけで。
それだけで満足アンデス。
訂正。
満足なんです。

彼女は、軍のエースパイロットです。
危険な任務を、笑顔で潜り抜けてゆきます。
元は辺境のウエイトレスさん・ハイでしたが、いつのまにか入隊してました。
新隊員にも関わらず、生まれ持った幸運と笑顔で、正しい道を歩いてゆきます。
彼女が居なければ、トランスバール銀河は滅亡していたでしょう。
しかし、ひとたび仕事を離れれば、普通の女の子です。
お菓子作りが得意で、誰とでも仲良くなって。
愛する人と結ばれる事を夢見る、普通の少女。
彼女の笑顔で、どれだけの人が救われたでしょう。
俺はそんな彼女が……。

なんでアニメとゲームで、こんなにも設定違うんだよっ!


とゆことで最近、ギャラクシーエンジェルとかって作品がお気に入りでして。
最初レンタル屋で、アニメを借りた時はどーとゆーことはなかったんです。
てゆか、第一期はつまらなかった。
最初の3話位で、見るのをやめてしまったし。
ところが、友達の家で、第二期を見たんです。
なんつーんですか。
投げっぱなしバーニングハンマーって感じですか。
吉田戦車的な、無法ぶり。
友達の娘と並んで、2時間近く見てしまいました。
「ああっ、あぶなーい!」とか言う、友達の娘(6)萌え。
萌えんなよ。

んで、速攻で収集開始。
秘密の非合法手段で、全話収集完了しましたよ。
なんか面白れー。
全然どうでも良い話の連続体で、気の抜けたシナリオ群。
この『総監修』に水野良の名前があるのは、きっと何かの間違いだろう。
てゆか、OPテーマとEDテーマが秀逸。
耳に残って、離れねー。
いえーい! しぇきしぇきっ!
てゆか、堀江美都子とエンジェル03の『ギャラクシー☆ばばんがBANG』最高。

で、ですね。
結構面白かったんで、ゲームを買ってしまったんです。
かなり期待して。
……………………。
全然設定違うじゃん。
ミルフィーって誰だよ。
なんで、ノーマッド出てこないんだ?
大ファンなのに。
どのくらいファンかとゆーと、月水金土に見られる、大内さんのラジオ体操くらいファンなのに。
しかし、これで納得。
ああ、水野良は、こーゆー感じで参加かと。
……。
アニメで、全然生かされてないじゃん。
まあ、あれはあれで、全然OKなんでしょうが。

全力で、くだらないことに力を注ぐ。
精一杯、身にならない事に心を砕く。
それが俺の好みなのでしょう。
しゅわしゅわブンブン、しゅわブンブン、いぇーい!


9/15

なかなか更新できなくて、申し訳ありません。
もう、まったくと言ってよいほど、自分の時間が取れなくて。
朝6時の電車で通勤し、45分間読書。
夜9時半の電車で帰宅、45分間読書。
最近は、時代小説ばっかり読んでます。
ちょっと、恭也の気持ちが解ったりして。
こーゆー小説ばっかり読んでると、言葉が時代がかるね。
『我が身』とか、『止むを得まい』とか。

てゆか。
忍者。
俺、忍者。
体型とか戦闘能力とかじゃなくて、心が忍者。
司馬遼太郎先生の、『梟の城』に、こんな一文がありました。
『忍者の心は無形。相手が望む言葉を発し、相手が望む態度を取る』
一文が有りましたとか言っておきながら、てめーで要約したものなんですが、まさに俺はそう。
アルバイトの時でもそうなんだけど、相手が望む方に、仕事とか話を持っていくことが出来るんですね。
それも、ほとんど脊髄反射で行ってしまうのだ。
相手を偽り、己を偽り続けた結果、われでも本当の自分がどんな者だったか思い出せもせぬ。
流れる雲は心地よきかもしれぬが、なんと心許無いことよ。

てゆか、場の雰囲気を読んで、瞬時に自分のポジションとキャラクターを作り出すんですね。
アルバイト先での俺は、『トボけたトークを連発しながらも、仕事はきっちりこなす、明るいデブ』って感じですか。
まだ勤めて2週間くらいなのに、既に一現場任されてしまってるし。
あ、別に自慢な話じゃないんですよ。
なんてゆーのかな。
ここまでやる必要が無いってくらい、サービス過剰なんですね。
おそらく俺と同じ人種が居たら、俺の偽りを見抜いて蔑むでしょう。
本当は、我を通して生きてみたいと思ってるんですが、既に手遅れなんですなあ。
人の顔色を伺い、しかも屈服せずに自分を表現する降りをする。

我、雲の如く。

この性質、小説書くときは結構便利だったりして(笑)。


9/05

本日を持ちまして、当HPにおける『ゲスト』のコーナーを廃止させていただきました。
壁紙、イラスト、レビューなどお寄せくださった作者の皆様。
本当にありがとうございました。
なんの恩返しも出来ませんが、参加していただいて本当に嬉しかったです。

そんで今後の展開など。
フリーターの愚痴日記なんか、つまらないだろうし(笑)。
一応二次創作にも区切りをつけ、今後は一次作品関連をメインに発表していきたいと思っております。
関連ってどーゆーことかとゆーと。
勿論俺は一次作品を書いていきたいと思ってるんですが。
なんつーんでしょーね。
一次作品に関連するコーナーを作って行きたいと思ってるんです。
例えば(以下の提案は未定です)


●一次作品を一緒に作っていく
少人数では有りますが、これは既にスタートしております。
俺の作品関連で、イラストを描いてくれる人。
外伝的な作品を書いてくれる人。
プロットアイデアを出してくれる人。
そーいった人たちと、一緒に作品を作って行けたらなあとか思ってます。
究極的な理想は、クトゥルー神話みたいな感じ(笑)。
同一設定で作品を書き、しかも各々が設定を広げてゆく。
気づいたらいつのまにか、巨大なワールドが出来てる、みたいな。
あるいはSNEみたいに、ユニットめいた関係を構築できたらなあと。
それぞれ得意な分野で(あるいは参加できる分野で)、作品を作り上げていく。

別に、俺主導でなくても構わないんです。
むしろ俺は、二次創作的な作り方のほうが得意なので(笑)。
キャラクターとか世界観を作ってもらって、それを動かす方が楽かもしれません。
あ、ひとつご注意なんですが。
同人として発表しよーとか、商業デビューを目論もうとか思ってるわけじゃ有りません。
そーゆー野望のある人は、そっち系のサイトに参加していただくか、自分で組織していただきたい(笑)。
あくまでも、ネットが主戦場。
いつか、全然知らない人に「あ、知ってる知ってる」って言われたいですね(笑)。

これに関連して、討論会的なものもやってみたいと思ってます。
なんてゆーんですか。
『あの設定はおかしい』とか、『ここは解り辛い』とか、『俺ならこう書く』とか。
今まで俺が個人的に意見を頂く事はあっても、それをネットで公表する事は無かったんです。
イジることはありましたけど(笑)。
今までこのHPに無かった、『横のつながり』的なものが欲しいんですよね。
それは別に、俺の作品に対してだけじゃなくて。
例えば、『テーマの作り方』とか『プロットの打ち方』とか、そんな話が出来ればなと思ってます。


●一次作品の批評場を作る。
これは、上記の提案と若干かぶる感じもありますが。
一次作品をお寄せ頂いて、それについてあーだこーだ言うコーナーを作りたいと思ってます。
感想から批評まで。
規定を満たす作品であれば、俺が読んでイジり倒してみたいと思ってます。
規定って言っても、別に厳しいものを設けるつもりは無いんですよ。
例えば、『厳しい意見を言われてもブチ切れない』とか『最低一ヶ月に一話は書く』とか『メアドは公開する』とか。
もう少し欲を言えば、『最低5000字以上書く』とか『連載ならば最後まで書く』とか、そんな感じですね。
お寄せいただく一次作品は、文章に限らないよーにしようと思ってます。
一枚のイラストとかコラムに対して、あーだこーだ言うのって、楽しそうじゃないですか。

これは心を鬼にして厳しい事を言おうと思ってるので、もしかしたら新しいキャラとか作るかもしれません。
『kyon』が嫌われるのは、ヤなので(笑)。
作品を批評する毒舌キャラ。
勿論『kyon』とは別人なので、「だったらお前が書いてみろ」的な突っ込みも回避できます(笑)。
チャットとか開設してもいーんですけど、ログ取るのが面倒なので、BBS形式がいーかなーと思ってます。



他にもアイデアはありますが、もう少し詰めて考えたいと思ってます。
開始次期は、11月くらいからですかね。
三周年を機に、HPのリニュを考えてますんで。
アイデアとか参加表明とかあったら、ぜひお寄せください。
仕事がきっついんで、日曜日更新がメインになるとは思うんですけど。
参加してくれるスタッフも募集しております(笑)。


ボーナストラック

『僕らは迷い子』



 少女は、そっと家を出た。
まだ日の昇らぬ暗い道に、静かな足音が響く。
一歩。
また一歩。
この世界に、少女しかいない証が響き渡る。
耳を澄ませば聞こえてくるのかもしれない。
安らかな寝息。
新聞を配る少年の息遣い。
街を横断する、黒煙を吐くトラック。
長距離通勤をする、サラリーマンのため息。

 だが少女には聞こえなかった。
もう少女は、生きてはいないから。
心臓は鼓動を刻んでいるが、それだけである。
少女は死のうと思っていた。
既に心は死んでいるからだ。
大好きな本を胸に抱き、本の間に剃刀を隠し。
死に場所を求めるため、靴音を響かせる。
理由は解らない。
失恋したとか、クラスで浮いているとか、そんな感じだったかもしれない。
もうどうでも良い事だ。
この世をはかなみ、死のうと思っていた。
自分の目の前には、蜘蛛の糸など下がっては無い。
どれだけ待ち焦がれても、救いの手などやってはこない。
だから死ぬ。
それだけの話だ。


 商店街に出た。
雑踏の中、足に何かが当たる感触で、ぴたりと歩みを止める。
少女はかがんで、それを拾い上げた。
朝日に輝くそれは、度の強い銀縁眼鏡。
グリグリ眼鏡と呼ぶに相応しいそれを、少女は何気なく掛けてみた。
世界が一変する。
今まで見えていたものは、全て虚構の色の中。
本当の世界は、こんなにも歪んでいるのだ。
優しげに微笑む老人の中に、錆びた釘が見える。
きっと老人は、その言葉で人を傷つけるのだろう。
人の良さそうなサラリーマンの中身は、白い鼠だった。
あの鼠が、彼を動かしているのだ。
颯爽と歩くオフィスレディの中には、色とりどりのクレヨンが詰まっている。
人によって、その心の色を変えるのだろう。
そんなものがギチギチと、皆の中に詰まっていた。
歪んだ視界の中、本当のものが透けて見える。
ああ、世界はこんなにも嘘にまみれていた。
ならばしょうがない。
生きていく事自体辛いのならば、それは修行なんだろう。
少女はグリグリ眼鏡を外し、放り投げた。
世界は虚構に彩られている。
だから見つかるはずも無い。
少女は、この世の真実を見せてくれたグリグリ眼鏡に、別れを告げて歩き出した。


 歩き出した少女の瞳に、道端に置かれた古いポストが飛び込んできた。
ポストの傍らには、少年がたたずんで居る。
少女は思わず凝視した。
何故なら少年の額には、小さな郵便切手が貼られていたからだ。
別に興味は無かったが、少女は尋ねた。
どうして切手など貼って、ポストの脇に立っているのかと。
少年は柔らかに微笑んで答えた。
「この切手を貼っていれば、郵便配達が運んでいってくれるのさ」
どこに行きたいのかと、少女は尋ねた。
少年は少しだけ考えたあと、こう答える。
「満天の星空の見えるところへ」
しかし今は朝だ。
星空など見えるはずが無いと少女は言う。
「そうだね。星空は今、僕の足の下にある。レティクルの空は、僕の足元にある」
そういうと少年は、瞳を閉じた。
きっと少年の心には、見えるはずの無い星空が浮かんでいるのだろう。
どうしてそこに行きたいのか、少女は聞いてみた。
少年は瞳を閉じたまま、小さく呟く。
「贖罪のため」
そう答えた少年は、やがて動かなくなった。
きっと少年は、一枚の絵葉書になったのであろう。
満天の星空を写した、一枚の絵葉書に。
少女は、そこに辿り付ける様願いながら、少年に別れを告げて歩き出した。


 お昼近くまで歩き続ける。
少しだけ足が痛くなり、少女は公園のベンチに腰掛けた。
疲れた足を投げ出し、少女は深くため息をついた。
「随分お疲れのようだね」
いきなり隣から離しかけられた。
どうやら少女は、先客に気づかないほど疲れていたらしい。
「どうだい一緒に、温泉でも?」
そう言ったのは、猿であった。
お山の上に住んでいるはずの猿が、流暢な言葉で少女に話しかけて来たのだ。
少女は温泉など入るつもりは無いと告げた。
すると猿は少しだけ悲しそうな顔をして、こう続けてきた。
「温泉は良いよ。心のトラウマがほぐれていく気がするよ」
トラウマなど無いと少女は言う。
「そうだね。人は辛い思い出をトラウマなどと言い、楽しい思い出を思い出と呼ぶ。本当はどちらも思い出なのにね」
猿は空を見上げながら、皮のたるみから煙草を取り出して一服吹かした。
立ち上った紫煙が、青空に消えてゆく。
少女は浮かんだ疑問を、猿に告げてみた。
ならばどうして温泉になど誘うのか、と。
猿は苦笑いを浮かべ、一枚の紙を手渡してくる。
紙には、『猿と入る激安温泉地』の文字と、暖かな家族の写る温泉宿の写真。
「客引きさ。せちがらい世の中だからねえ」
パンフレットの家族は、楽しげに笑っている。
「本当は温泉なんか行かなくても、笑えるんだよ」
猿は空を見上げて、何かを思い出してるようだ。
そういえば最後に笑ったのは、いつだったろう?
足の疲れも取れた少女は、猿に別れを告げて歩き出した。


 公園から出るとすぐ、一人の女性とすれ違った。
長い髪の女性の白いワンピースの胸には、大輪のような赤。
大量の赤い色が、女性の胸と口元を染め上げている。
さすがに不安になった少女は、女性に大丈夫かと声をかけた。
女性はうつろな目をして、少女にこう答える。
「大丈夫よ。もう私死んでいるから」
歩いている女性は、もう屍だと言う。
ならば何故歩いているのかと、少女は尋ねた。
「愛する人に会いに行くの。みんなそうでしょ?」
答えられなかった少女は、別のことを聞いてみた。
もう死んでいるのに、愛する人にあってどうするのか、と。
「殺してもらうためよ」
女性はそういって微笑んだ。
もう死んでいるはずの女性は、もう一度殺してもらう事を望んでいるのだ。
何故殺して欲しいのか?
そう尋ねる少女に、女性は訝しげな表情を浮かべた。
何故そんな事を聞くのか、解らないと言わんばかりに。
「私は死んだの。でもあの人に殺されたわけじゃない。だったら殺して欲しいと思うのが当たり前でしょ?」
納得できない少女に、女性は続けてこう言った。
「好きな人に殺してもらうのは、幸せな事。忘れられてしまうなら、せめて殺して欲しい。あの人は夜の植物園で、私を殺すために待っているはずだから」
ゆっくりとした足取りで、女性は歩き出した。
そう言えば少女は、自分で自分を殺すために歩いていたのだ。
考えれば、あの女性は幸せな気がした。
殺されるためとはいえ、最後の瞬間、愛する人に会いにいけるのだ。
少し寂しくなった少女は、女性が愛する人に殺されるように願いながら、別れを告げて歩き出した。


 街の外れに差し掛かった少女は、壊れた建物の前で足を止めた。
中から爆発されたような映画館に、女の子が植物鉢を捧げている。
どうしたのかと少女は尋ねてみる。
「ここで、あたしの好きだった人が死んだんです」
両手に鉢を抱えた女の子は、そういって笑った。
女の子の持つ鉢には、緑色に輝くサボテン。
「あたしの好きだった人は、サボテンが神様でした」
物言わぬサボテンを、神様と思う子が死んだ。
何故死んだのかと、少女は尋ねる。
「下らないこの世を吹き飛ばすため、爆弾を仕掛けたんです」
女の子は笑った。
「最初は成功したんですよ。一緒に爆弾を仕掛けた猫は、とても頭が良かったから」
そういって笑う。
だが次の瞬間、女の子の目から涙が零れ落ちた。
「でも二回目に仕掛けた爆弾で、男の子はこのムービーシアターと一緒に吹き飛んでしまいました」
何故失敗したのだろう?
そう思う少女に、女の子は続けた。
「上映されていた映画に見とれて、男の子と猫は死んでしまいました。男の子は、映画も好きだったんです」
自分の仕掛けた爆弾で、好きだった映画に見とれて死んでしまう。
それは滑稽な事なのか、悲しい事なのか、少女には解らなかった。
「男の子は、サボテンも好きでした。でも最後の瞬間、サボテンが無かったんです」
だから女の子は、こうしてサボテンを供えているのだろう。
少年と猫とサボテンが、いつまでも一緒に居られるように。
きっと男の子は、幸せだったのかもしれない。
自分の好きなものに殺され、いまごろ流れる雲を追いかけているのだろうから。
大好きだった映画のワンシーンように、サボテンと猫と一緒に。
残された女の子も幸せで有ればよいなと思いながら、別れを告げて歩き出した。

「いろんな人に出会ったニャー」
少女は夕暮れ近く、道に座っていた子猫に話しかけられた。
「僕のニャーは、ドルバッキー。君は?」
しかし少女は、答えられなかった。
自分の名など、もう意味は無いのだから。
大好きな本の間に隠した剃刀で、出会って来た人たちと同じように死ぬのだから。
「それは嘘だニャー」
ドルバッキーは、何も言わない少女の心を読んでいるように言った。
「君は死ぬつもりなんか無いニャー。ただ死に憧れているだけニャー。自分がどれだけ可哀想なのかを、自分にアピールするためニャー」
そんな事は無いと、少女は反論する。
しかしドルバッキーは、鼻を鳴らして笑った。
「ならば何故、その剃刀を使わないんだニャー? いいや、何故死に場所を探そうと歩くんニャー? 死ぬニャら、どこで死んでも一緒だニャー」
ドルバッキーと名乗る子猫の言葉が、少女の心を苛んだ。
真実子猫、ドルバッキー。
彼の前では、全てが明かされる。
「君は結局、きっかけを探しているだけなんだニャー」
きっかけとは何か?
そう尋ねる少女に、ドルバッキーは言った。
「それは君が。君の中の無数の目玉が、もう知っているニャー」
心の中を見透かされた少女は、少しだけ怒りを浮かべてドルバッキーに告げた。
ならば、次。
飛行機を見たら、死のうと。
飛行機を見たら、大好きな本の間に隠しておいた剃刀で、この命を絶とうと。
「ま、それもきっかけニャー」
そう笑うドルバッキーに別れを告げ、少女は歩き出した。
飛行機を探すために。

 飛行機を探して彷徨っている時、少女は高い塔を見つけた。
風車のついた塔の天辺では、男が何か叫んでいる。
街の傍に、こんな塔があるなんて知らなかった。
だから少女は、叫ぶ男に尋ねてみた。
何故に塔の上で、叫んでいるのか、と。
男は叫びながら答える。
「叫んでいるんではない! 詠っているのだ!」
何を詠っているのかと尋ねる少女に対して、男は答える。
「下らない世の中に殺された娘の、魂を救済するためだ!」
口から泡を吹き出して叫ぶ男は、こう続ける。
「いつか私の詩声は、紫の蝶になってこの世を包み挙げるだろう! あの子の好きだった紫の蝶になって!」
紫の蝶に包まれたこの世は、どうなってしまうのか?
そう尋ねる少女に対して、男は叫んだ。
「全てを消してしまうだろう! あの子の好きだった街も、アイドル歌手も、クリームチーズケーキも! 全て紫の夢の中に! あの子の夢の中に!」
そうしたら、叫ぶ男はどうするのだろう?
少女の疑問に答えるように、叫ぶ男は朗読を続ける。
「そうしたら私は、あの子に会いに行ける! ボートに乗って紫の海を渡って、ひまわり畑でフラフラ踊るあの子に! その時下らないこの世は、爆発するのだ! 駄目な私と、駄目な娘だけを残して!」
叫ぶ男は、少女の事など忘れて叫び続ける。
それが娘を亡くした叫ぶ男に出来る、唯一の事なのだろう。
だがふと気になって、塔を仰ぎ見る。
そう言えば、叫ぶ男の顔は、どんな感じなのだろう?
しかし塔の上で叫ぶ男の顔を、見る事は出来なかった。
まるで、首から上が無いかのように。
いつか娘に会えることを願いながら、叫ぶ男に別れを告げて歩き出した。

 小さな公園まで歩いてきた。
未だに飛行機は、少女の頭の上を飛びはしない。
キョロキョロキョロキョロと飛行機を探すと、公園の方から小さな金属音が聞こえてくる。
見れば、体が細く幸の薄そうな男が、ブランコを漕いでいた。
右手には、細いアンテナを持っている。
銀色に輝くそれは、不思議なオーラを放っていた。
少女はアンテナを持つ男に、何故アンテナなど持っているのかと問う。
男はうつろな瞳を向け、こう答えた。
「アンテナは、電波を受信するものさ。あたりまえだろ?」
男は、電波を受信しているのだろう。
ならばアンテナを持っているのは、当然だと思った。
「君もどうだい? このアンテナは凄いよ。万病にも効くし、君のソプラノだって響き渡るよ」
ソプラノで歌うことなど無いと少女が告げると、男は肩を落とした。
「そうか……狐つきだって治せるんだけどなあ。成層圏のそのまた向こう。レティクル座から電波を受信できる優れものなのに」
そう言われても、少女にアンテナは必要なかった。
アンテナを手に取る事をしない少女を見て、アンテナ男は再び肩を落とした。
「いつもそうなんだよ。僕は営業が下手なんだ」
どうやら男は、アンテナの販売員だったらしい。
疲れた顔で天を仰ぎながら、アンテナ男は呟いた。
「兄さんと一緒にアンテナを売り歩いた頃は、飛ぶように売れたのになあ。若くして姉さんが死んで、兄さんもしがないアンテナ売りで一生を終えた。フェテシストだった姉さんと意気地なしの兄さんは、今頃幸せに暮らしているんだろう。なのに僕は、下らない世の中で、未だにアンテナを売っている……」
アンテナ男が見る空を、少女も見上げてみた。
飛行機は飛んでいない。
「ねえ君。僕の夢を聞いてくれるかい?」
少女は頷いた。
「僕はアンテナを取り付けるのが好きなんだ。どこかテレビも無いような村で、アンテナを取り付けるために、屋根の上に上るのが好きなんだ。その屋根の上から転げ落ちたとき、優しい娘に助けてもらって、恋してもらうのが僕の夢なんだよ」
いつか優しい娘に出会う事が出来ればよいなと思いながら、アンテナ男に別れを告げて歩き出した。

 もう夕闇が迫る時間だ。
飛行機など見えはしない。
そう少女が思ったとき、目の前に白いものが見えた。
白衣を着た男が、天に向かって何かを振り上げているのだ。
少女は男に歩み寄り、何をしているのかと尋ねた。
男は赤く血走った瞳を向け、こう答える。
「人を幸せにするための機械を作動しているのだ。この機械が動けば、天上世界から天使が降りてきて、この世の下らない人を救ってくれる」
それは少女の夢見た、蜘蛛の糸のような話であった。
血走った目をぎらつかせながら、男は天に機械を振り上げる。
「さあ、来い天使よ! 下らない僕たちを救ってくれ! 下らない世の中! つまらない友達! そしてそんなものに気をとられ、足踏みしてしまう僕たち! そんな僕たちを、下らない僕たちを、救ってくれ!」
だから少女も願った。
救って欲しい。
下らない私たちを、どうか救ってください、と。
男は白衣を振りかざし、血走ったままの目で少女を見つめた。
「君も僕が狂っていると思うか!? この世の全てを救おうとしている、この僕を?」
確かに男は、狂気に捕らわれているのかもしれない。
何かを救おうなどとは、思い上がった幻想なのだろう。
だが男は、本気で機械を振りかざしていた。
世界を救う、天使を呼ぶ機械を。
男が振りかざす機械は、男の辛い思い出そのものなのだろう。
だから少女は、言った。

「信じる。私は貴方を信じる」

たった一人。
彼女だけがこの世でたった一人、男を信じた。
二人で機械を、天に振りかざす。
光が天から降り注ぎ、拍手が舞い降りる。
グリグリ眼鏡をかけた街の人たちが。
額に切手を貼った少年が。
温泉へと誘う猿が。
愛する人に再殺される事を願うゾンビ女性が。
右手にサボテンを持ち、猫を抱いた女の子と手を繋ぐ男の子が。
真実を告げる子猫のドルバッキーが。
娘のために塔の上で叫ぶ男が。
全てを失ったアンテナ男が。
二人の周りを取囲み、拍手を鳴り響かせる。

人生はおおはしゃぎ。
体操のように、クルクル回り続ける。
ならば生きてみよう。
こんな自分は嫌だけど、もう少しだけ。
悲しみに全てを無くした全ての人たちの代わりに。
代わりに私が、生きてあげようかな。
前を向いて歩き出した少女の上を、飛行機が静かに横切った。


人生を、戦え。


                   END


9/02

うあ、もうくがつ。
てゆことで、フリーターのkyonですこんばんあ。
通勤形態が変わってしまい、車が使用不可になってしまいました。
電車で通ってるんですが、始発で出勤して終電で帰る日々。
俺は浜省か。
今日もーはーどわーく・でぃすおんりー。
俺たちが組み立てた車がアジアの、どこかの街角で焼かれるニュースを見るっての、ホント。
車なんか組み立ててないけど。

基本的に、立ち仕事なんですよね。
俺の豊満な肉体重が、全て踵に収束するわけです。
あ、今なんか思いついたんだけど、忘れちゃった。
だから、踵が痛いんです。
てゆか、熱を持ってる気がします。
持ってます。
何か、生物学上、未だ発見されていない何かが生まれそうです。
生まれるってゆーか、孵ります。
んで、結構厳しい環境なんで、直ぐに人が辞めちゃうんですね。
まー、フリーターなんて、こんなもんか。
個人個人で違うだろうけど、なんかちょっとやりきれない感じですね。
北海道には『やるせない川』とかって川があって、そこに行くとやるせなくなるとの、原画師情報。

別に、諭したりするわけじゃないんだけど。
『辛い』とか『苦しい』とか、あんまり人に言う事じゃないと思うんだよね。
友達に、愚痴として伝えるなら兎も角。
なんつーのかな。
前フリってゆーか、自分を良く見て欲しがってるってゆーかさ。
「疲れて体調が悪いんですけど、頑張ります」とかさ。
頑張るんなら、言わなくてもいーじゃんって思うんだよな。
自分はこんなに辛いけど頑張ってます的なアピール。
あんまり好きじゃないんだよな、俺。

これは別に、俺は凄いとかかっこいいとか、わんぱくでも良いたくましく育って欲しいとかゆーんじゃなくて。
そーゆーのを見せるの、苦手なんだよな。
今日も、事務所で言われたの。
「全然辛そうに見えない」って。
辛いっての(笑)。
でも、男が辛いとか悲しいとか、アピールしちゃ駄目だろって思うんだよ。
そーゆーのはさ。
なんとなく伝わるのが、一番かっこいいと思うんだよね。
自分から言っちゃ駄目だろ。
誰かに気づかれるまで。
誰かが気づいてくれるまで、不敵な笑みを浮かべて耐える。
それがかっこいいってことなんじゃないかと。
今、俺が目指せるかっこよさの中で、一番なんじゃないかと。
そう思うから、明日もふつーに仕事するわけだよ。

とゆーことで、ネットで愚痴る俺は、かっこ悪いわけだ(笑)。
さらに言うなら、気づいてくれる事を期待してる俺って、かっこ悪い。
30年以上生きてきても、まだ届かない。
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