☆Diary〜昔から……そして今でも……〜☆













―――――あれから一日経ってもなんか気分が乗らない……。



私は机の上で開いていた日記帳を閉じる。

今では毎日日記をつけている人もそうそう居ないと思うけど、私は日記をつけるのが好き。

昔あった事を読み返して一喜一憂できるし、なにより……告げる事のできない想いでも日記帳になら書けるから……。



でも、昨日の欄は空白のまま……。

なぜなら、書こうにも何をしたのかが分からないのだから……。





「……緋那、なんで気が付いたらあんな格好してたんだろう……」





…………気が付いたら裸に近い格好をしていて、訳も分からずにパニクっちゃったからなぁ……。

静流お姉ちゃんが説明してくれた事もなんとなく納得できなかったし……。もちろん静流お姉ちゃんを疑ってるわけじゃないんだけど……。

皆の前であんな格好で恥ずかしかったし、それにそれに……。



私は段々と自分の顔が赤くなっていくのがわかった。





「それに……やっぱり一番恥ずかしいのは…………あんな格好を…………」







コンコンッ







不意にドアをノックされる。

こんな時間に誰だろう……?





『緋那ちゃん〜起きてマスか〜?』





この声は……って一人しか居ないか。妙に発音が悪いんだからね♪





「レイナさん?」



『はいデス〜。ちょっといいでショウか〜?』



「あ、どうぞ、ドア空いてますから♪」





そう言うとゆっくりとドアが開き、レイナさんが入ってきた。





「緋那ちゃん、夜分遅く申し訳ごザラぬ♪」





いや、ござらぬっていつの時代ですか?

今の時代劇のセリフでも言わないですよ……。





「ははは……。で、どうしたんですか?」





レイナさんは私と向かい合わせになるように座る。

でも……やっぱりどう見ても私より年上には見えないよ、レイナさんって。

私と同じかそれ以下…………ってそれって失礼だよね……。





「え、えっと…………、今日はご苦労さまでシタ♪ ふつつかものデスガ、これからもここで頑張りますので宜しくお願いイタシマス♪」





……レイナさんは今日からここ「ペンション大巨人」のお手伝いをしてくれている。その事を言っているんだろう。





「ううん、こちらこそ♪ レイナさん頑張ってくれるから助かるんですよ〜」



「いえイエ、私なんてマダマダですよ〜♪これからもご指導おべんちゃらの程をお願いいたしマス〜」





『おべんちゃら』じゃなくて『ご鞭撻』なんだけど……、まあいいか♪





「あ、あはは、うん、これから頑張りましょうね♪」



「はいデス〜♪」





レイナさんは満面の笑みを私に返してくれる。レイナさんってこうして改めて見るとすっごい美人……。

この笑顔も『天使の微笑み』と言うフレーズがピッタリだ。



緋那なんかが……かなうわけ無いよね。

……はなから勝負になっていないのは言わない約束ですよ♪



でも、何でそんな事考えちゃうんだろう……?





「…………落ち着きましたカ?」



「……え?」



「昨日の……事デス……」





さっきの笑顔とは一変、ちょっと悲しそうな顔をして聞いてくる。





「え、えっと……」



「大丈夫デスよ♪ ちゃんと大河サンが守ってくれましたから。緋那ちゃんは無事ですよ〜」



「うん……、でも、昨日の記憶が無い事がちょっと……」



「え、エット〜、昨日静流サンが言ってた通りなんデスよ。だから安心シテくだサイ♪」





あ…………。

もしかしてレイナさん、私の事を心配してくれて来てくれたのかな……。





「すごかったんデスヨ、大河サン。なみいる変質者をバッタバッタと斬り倒して……」





大げさなアクションをして話してくれる。

そんなレイナさんにとても励まされるような気がして……、とても嬉しい……。

でも…………なんでレイナさん笑顔が引きつってるんでしょうか?



…………まあ、いいか……。





「…………そこで大河サンの超必殺技『大河キック』がずば――んと……」



「…………レイナさん、ありがとう…………」



「……ヘッ?」





レイナさんは一瞬「?」と言う顔をしていたが、すぐに笑顔になり……





「アハ、アハハ……。でね、ここからが凄いんデスヨ♪」



「あ、そうだ、まだ寝ないですよね? ちょっと飲み物持ってきますからそれを飲みながら話しましょうね♪」



「あ、かたじけないデス♪」



「じゃ、持ってきますね♪」





そういい残して部屋を出る。



……元気出さないとな……、私も……。

記憶がなくったってお兄ちゃんが助けてくれた事は事実なんだから!



……そうだ、お兄ちゃんにまだ「ありがとう」言ってなかった……。

明日会ったら一発目に言おう。

緋那の最高の笑顔とともに……。





















「緋那ちゃん、ちょっと元気出てきたみたいでヨカッタです♪」





緋那ちゃんを待つ間、私は一人で微笑んでいた。

今日一日元気が無かったみたいだから心配してたんだ〜。

だって…………





「元はと言エバ…………私のせいですカラ……」





そうだ、昨日緋那ちゃんが誘拐されたのも本当は私がここに居るからなんだ……。

ここに居るだけで無関係な人達が被害にあう……。それだけは嫌だ…………。





「いっそ……いっそのこと私なんて居ない方が……」





…………って、思う事もあるんです……。



でも……そんなこと言ったら大河さんやオーナーさんに怒られちゃうのかな……?

守ってもらってる人達に怒られちゃうのかな……?

そして、嫌われちゃうのかな…………?





「それだけは……、それだけは嫌デス……。嫌われるのだけは……」





……だから私は生きる。

私が好きになった人達に嫌われないように……。

そして何より…………。





「ん?」





そんなとき、ふと目に入ったものがあった。

緋那ちゃんの机の上に置いてある赤いノート。

なんかかわいいオプションがついていて私の目を引く。





「何でショウか、これ……?」





私は緋那ちゃんの机に近づき、そのノートを見る。





「エット……『緋那の日記帳』……ですか……? あ、Diaryデスネ」





日記帳……、一日一日の出来事を書き綴るもの。

私もあの事が起きるまでは書いていたなぁ……。





「…………ん?」





……緋那ちゃんの日記を良く見ると表紙に大きな字で何かが書かれている。





「えっと……『絶対絶対中を見ないこと! 緋那』デスカ」





なにか見られてはいけないものがあるのでしょうか?

私の日記は別に誰に見られても良いと思うのですが…………?

もしかして…………あのネコ耳カチューシャの秘密とかでしょうか♪



緋那ちゃん、「見るな!」といわれると余計に見たくなるのが人間というものなのです……。

私は誰も居ないと分かっていながら辺りを確認して……





「ウフフ♪ 緋那ちゃんガ居ない間にチョコッとだけ……♪」





……と、日記帳を手に取った瞬間…………。







バタンッ!







「レイナさん遅くなってごめ…………」



「あ…………緋那ちゃん」





グットタイミングで……いや、この場合はバットタイミングと言うんでしょうか♪

なんてベタでお約束な結末なんでしょうか♪

今時昼ドラでさえ使いませんよ、こんなシーン♪





戻ってきた緋那ちゃんは私と日記帳を交互に見ている……。

私はというと……日記帳を持ちながら満面の笑みで緋那ちゃんを見つめ返す。



ああ……この重い空気がなんか辛いです…………。





「レ、レイナさん……?」



「ハ、ハイ♪ なんでショウカぁ?」



「な、中…………読みましたか……?」



「い、いえ、ゼンゼン読んでござらぬデスヨ♪」





…………な、なんかアブナイ雰囲気です……。うう、もう少しで中身が読める所だったのにぃ……。

とりあえず元の場所に…………。













キイィィィィィン――――――













あ…………………………。

私の頭の中にこの日記の『過去』が入ってくる…………。





『あ……、私の読みたいっていう気持ちが強すぎて……無意識にリーディングを使っちゃったんデスネ…………』









…………この日記の最近の過去が見えてくる…………。











――――――4月13日



『4月って言う事は……、一ヶ月ぐらい前のモノですね。割と最近の話でショウか……』





――――――4月13日



「今日も学校で元気に勉強勉強♪ 嫌いな教科が多かったけど、今日は午前中で終わりだったから全然へっちゃらで乗り切れました♪

相変わらず凛のヤツがうるさかったけどまあいつもの事だからね。

凛ってなにかにつけて緋那に突っかかってくるんだもん、緋那もつい喧嘩腰で言っちゃうんだよね……。

別に嫌いって訳じゃないんだけど、凛のこと。まあすごく好きという訳でもないけど。

クラスで人気もあるし、他のお友達の話を聞いても悪い人じゃないみたいだし……。

一度普通に話してみようかなぁ? そうしたら今までの事が嘘みたいにお互い仲良くなれるかもしれないし♪

……あはは、でも無理かぁ。凛も緋那も今までの関係が一番しっくりしてるんだろうしね。

っていうことは、今の二人って以外に仲が良いって事なのかなぁ?

確かにあいつが風邪引いて休んだときなんかってちょっと物足りない雰囲気があるもんね……。

やっぱり二人は今の状態が一番良いんだね。あっちはそう思ってはいないかもしれないけど。

凛、これからもよろしくね♪ 大嫌いだけど……大好きだよ♪」









『これは……凛っていう子の事デスね。緋那ちゃんのお友達でショウか?

でも、嫌いなのに好きって……一体どういう事でショウ?』





私は謎に思いながら時間を進めてみる事にした…………。





――――――4月16日



「今日は珍しく部活の部長さんがお休みでした。部活の先輩に聞いてみると……

『昨日H市で発見されたミステリーサークルを現地調査しにいくっ!』と言って突如教室から消えたらしいです。

さすが部長さん……『思いたったらすぐ行動!』っていうポリシーそのまんまの人だなぁ……、ある意味尊敬しちゃいます♪

以前もI市で見つかった幻の生物『スーパーオトモテンガエル』を約一ヶ月半現地に泊り込みで探していたっけ……。結局見つからなかったらしいけど。

『そのカエルをどうするんですか?』って聞いたら『もちろん…………呪殺の材料に決まってるでしょ♪』って笑みを浮かべながら話してた……。

……やっぱり、見つからなくて正解だったかもしれないね♪ 誰が狙われてたのか分からないけど、呪殺なんてことしたらだめです♪

どうせやるんだったら恋のおまじないとか…………ねっ♪

それにしても部長さん、本気でH市に行ったのかなぁ……? あの町までは確か1500kmぐらいあるはずなんだけど……。

明日学校にこれるんでしょうかねぇ……部長さん……。

ちなみに今日の部活は皆で和気藹々とお話して解散しました♪」









『な、なんか怖い部長サンです……。

でも…………、部活って、何でスカ…………?』





さらに謎を抱えたまま時は進む…………。





――――――4月22日



「今日はなんか複雑な気分……。緋那、今日男の子に告白されちゃいました。

男の子は中二の頃から同じクラスで結構仲がよかった子。皆で一緒に遊んだりしてよくいろんな事を話してたけど、まさかこんな風に想われてたなんて……。

緋那、何にもとりえなんて無くてうるさいだけの女の子なのに好きになってくれるなんてとっても嬉しい。

『返事は明日でもいい』って言ってくれたけど……。

でも、男の子には悪いんだけど、緋那、断ろうと思うんだ。

だって、実は緋那のお友達でこの男の子の事が好きな子がいるんだ……。

その子には前から恋の相談を受けていて、緋那も応援していたしね。

そんな子の前でこの男の子と付き合ってる姿なんて見せられないよ…………。

その子がどんなに悲しむか……、緋那は見たくない……。

なにより、その男の子にはあの子の方が絶対絶対お似合いだしね♪

それに…………、緋那にも好きな人が…………いるんだ〜。

もう何年も会ってないけど……、その人は緋那の事なんか忘れてるかもしれないけど……、大好きなんだ…………。

こんな緋那なんかを好きになってくれてありがとう♪

でも……ごめんね。

あ〜あ……、明日この事をあの男の子に伝えるのがつらいなぁ…………」





『告白だナンテ……青春デスね〜。こっちまで顔が赤くなりマス〜。

それにしても……緋那ちゃんの好きな人って……どんな人でショウ? 気になりマス〜♪」









――――――4月26日



「なんと、なんとなんとなんと!!! 今日はお父さんから重大な発表がありました!!!

緋那のお兄ちゃん(と言っても血は繋がってないんだけど)の大河お兄ちゃんが長い長いお仕事を終えて5年振りに帰ってくることになりました♪

お兄ちゃんと会うのも久し振りだなぁ……。緋那の事、覚えてくれているかなぁ……?

昔お兄ちゃんがお仕事に行くまで何回か一緒に遊んだ事があるんだよね♪ もちろん静流お姉ちゃんともね♪

でも静流お姉ちゃんは緋那の事覚えてくれていないみたい……。なんか悲しいよぉ……。

緋那はちゃんと覚えてるよ♪ すっごく優しくて面白かったんだもん♪

もちろんお兄ちゃんの事だって…………。

だって…………大河お兄ちゃん、緋那の初恋の相手だもん…………ううん、嘘。実は今でも好きなんだ……、ずっと………。

はうっ、日記に書くのも恥ずかしいよぉ……、好きな人の事を書くの……。

意地悪で、無愛想で、でも優しくて……、緋那にはすっごくかっこよく見えた……。

お兄ちゃんは緋那の事なんか気にも止めてなかったかもしれないけど、緋那はずっと憧れていたの……。

だから本当は今の関係が恨めしくもあるんだよね……。

だって今はお兄ちゃんとは義兄と義妹……、どんなに頑張ってもこれ以上にはなれない……。そう、どうやってもお兄ちゃんの最愛の人にはなれないんだよね……。

だから……、ちょこっとだけ今の関係が嫌い……。

…………でもいいんだ。こうなったらとことんお兄ちゃんの妹してやるんだから♪

そうしていけばすぐには無理かもしれないけど……いい思い出になるよね、この想いも……。

でも…………今はまだお兄ちゃんの事、好きでいさせてね♪

ううん、『お兄ちゃん』じゃ無くって『伊賀崎大河』を……ね♪

でも……この日記、もう誰にも見せられないよぉ…………」





『緋那ちゃん……、大河サンの事を……。

そう………………なんデスか………………』





――――――5月1日



「今日とうとうお兄ちゃんが帰ってきたぁ〜♪

でも緋那が駅まで迎えに行ったのにどこに居るのか分からなかったの。見つけやすいようにちゃんと駅近くで360度見てたんだけどなぁ……。途中で目が回っちゃったけど。

で、仕方なく家に帰ったら……帰ってきてるんだもん……、一体どうやって来たんだろう?

でも蓮霞お姉ちゃん、緋那より先にお兄ちゃんに会ってるんだもん。あ〜あ、絶対絶対一番最初にお兄ちゃんに会うんだって決めてたのにぃ……。

なんか死にそうな顔してたけど……、やっぱり長旅で疲れてたからかなぁ……?

でも……5年経っても面影って残ってるんだね。すぐにお兄ちゃんだって分かったよ♪

髪型や格好は違っても昔遊んだ大河お兄ちゃんそのまんまだよね♪

嬉しい…………凄く嬉しい…………。また……また会えたんだね、お兄ちゃん……。

お兄ちゃんの前では何事も無いように振舞っていたけど、今こうして日記を書いてると…………凄くドキドキする…………。

しかもしかも! 緋那の隣がお兄ちゃんの部屋なんだ!

なんか余計に意識しちゃって眠れそうに無いよぉ……。ハァ…………。

…………でもお兄ちゃん、緋那の事、覚えてないみたいだな……。なんか『誰?』って言う顔で見てたし……。

しょうがないよね……、お仕事で忙しかったんだし……。

ちょっと悲しいけど…………。

でも……うん、大丈夫♪ 気にしてないよ♪

それより明日は緋那がお兄ちゃんを起こしてあげるんだ♪

優しく、起こしてあげるからね♪

朝ご飯、気合入れて作らないとね♪ お兄ちゃんの好きそうなものたくさん作ってあげるんだ♪

……明日から頑張ろう、緋那♪」





『辛いんデスネ、緋那ちゃん……。一生懸命自分の気持ちを隠して……』





――――――5月2日











『…………何も書かれてナイです……。そうか……、昨日デスからネ……。

一番辛かったんでしょうね……このときが…………』





――――――5月3日



「昨日は結局日記書けなかったよ……。でも頭の中が混乱しててそれどころじゃなかったし、昨日の出来事を全く覚えてないんだもん……仕方がないよね……。

気が付いたら裸でお兄ちゃんに背負われてるんだもん…………、驚きと恥ずかしさで何がなんだか分からなくなっちゃって思いっきり泣いちゃった。

お兄ちゃんや静流お姉ちゃん達に凄く迷惑をかけちゃった事、反省しています……。

でも、何より恥ずかしかったのは…………そんな姿をお兄ちゃんに見られちゃった事。今思い出しても顔が真っ赤になってしまいます…………。

……お兄ちゃんはこんな子供っぽい妹の裸を見たって何にも感じないって事は分かるけど…………、ううん、でもでもたしかに静流お姉ちゃんや連霞お姉ちゃんにはかなわないけど緋那だって結構……って、そういうことじゃなくて……緋那にとっては大好きな人に裸を見られたって事だから…………。

あう〜、なんかもう変な想像ばっかりが頭に浮かんで…………嫌になっちゃうよぉ…………。

でも、ただ一つだけ気になる事…………。

お兄ちゃん、緋那の体を見てどう思ったんだろう……?

……なんかお兄ちゃんの事、余計に意識しちゃってる……。やっぱり好きな気持ちを抑えるのって無理、なのかなぁ……。

…………はぁ、それにしても空白の時間があるってのはこんなにも不安だったって事、全然知らなかったよぉ……。

早く昨日のこと、思い出せないかなぁ…………。」





『緋那ちゃん…………』





……でも、緋那ちゃんが大河さんの事を好きだとすると…………、私と……緋那ちゃんは…………。

















『……Rival、なのかもしれまセンね……緋那ちゃん…………』

































「………………………………………………なさん?」



「…………………………」



「……………………いなさん? レイナさん?」



「………………は、はい!?」



「レイナさん、どうしたんですか、ボーっとしちゃって……」





……ああ、ちょっとボーっとしちゃいました……。

『過去を見る』とこうなっちゃうんですよねぇ……。





「あ、何でもナイです。それよりもコレ、置いておきマスね♪」





私は手に持っていた日記帳を緋那ちゃんの机に置いた。





「……レイナさん、本っっっっっっっっっっっっっっっっっっっっ当に中身…………見てませんよね?」





緋那ちゃんの視線がとっても痛いです…………。

今ここで「実は見ちゃいましたぁ♪」なんて言ったら……私は生きてここから出られないでしょうね……。





「も、もちろんデス♪ 『見るな』と書いてるモノを見るはずナイですよ♪」





……ああ、さっきと言ってる事が違います、私……。

あう、早くこの状況から開放されたいです……。





「……分かりました、信じます♪」





そう言うと私に満面の笑みをくれる。

……ひとまず……私の生命の危機は避けられたようです。





「……ありがとうござりマス〜♪」



「あ、それよりさっきの話の続き、聞かせてくださいよ♪ ほら、飲み物ももってきましたし♪」



「あ……、ハイです〜♪」





そうして緋那ちゃんとおしゃべりをして一日は過ぎていきました…………。





























―――――――――次の日



「お兄ちゃん、朝ですよぉ〜♪」



「…………………………」



「お兄ちゃん〜、朝ご飯ですよぉ〜♪ 起きてください〜♪」



「…………………………」



「お〜に〜い〜ちゃ〜ん〜、ご〜は〜ん〜で〜す〜よぉ〜♪」



「…………………………」





……もう、朝はきちんと起きてよねぇ、お兄ちゃん。

緋那だって朝はいろいろ忙しいんだよ〜。





「もう、お兄ちゃん! 起きてよぉ!」



「…………………………」



「起きないと…………、キス、しちゃうぞ〜」



「…………思いっきりディープなのでお願いします♪」



「そ、そんな……、そんな恥ずかしい事……って、お兄ちゃん! 起きてるんだったらちゃんと起きてよぉ!」



「……ん…………」





お兄ちゃんがだるそうな表情で起き上がる。





「おお、これは緋那さん、おはようございます♪」



「はい♪ おはようございます♪」



「じゃあ、おやすみなさい♪」



パタッ



「はい♪ おやすみなさい……って寝ちゃだめだよお兄ちゃん〜!」













……なんかバカみたいなお兄ちゃんとのやりとりだけど、緋那は楽しくてしょうがない。

やっぱり大好きなお兄ちゃんだからかなぁ……?



でも、朝はきちんと起きてよね…………。

起きないと………………。

















「…………………………」



「ちゃんと起きたぁ?」



「当たり前だろう……。そりゃみぞおちにエルボーがクリーンヒットすりゃ誰だって起きるぞ……」





お兄ちゃんはお腹を抑えながら言う。

やっぱりトップロープ(机の上)からのエルボーは強すぎたかなぁ?

(※良い子は絶対に真似しないように。もちろん、悪い子もね♪)





「だっでお兄ちゃん起きないんだもん……」



「すまんって……。ところで、そろそろ着替えてもいいか?」



「あ……、じゃあ先に行ってるからね♪」





私は2〜3歩歩いて立ち止まり………





「あ、あのね……」



「……どうした?」



「お兄ちゃん、おとついの事……」



「あ、ああ……、別に気にしなくて良いぞ」





お兄ちゃんはそっけなく答える。











でも私は嬉しかったから……。

おとついは言えなかった言葉、言いたいから……。

そして……冗談って思われてもいい、兄妹での社交辞令って思われてもいい。

昔から言いたかった言葉、言いたいから…………。





























「ううん、感謝してる♪ ありがとう…………、大好きだよ、お兄ちゃん♪」



















〜Fin〜

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