………………………………。
 ……………………。
 ……………。

「おにーちゃんーん。あさだよー。あさですよー♪」
「そのとーリデす〜♪」

 ………………うるせぇ。
 忍者は常に夜間行動。
 だから朝は弱い。
 故にこんなに早く起きなくても良い。
 伊賀崎流、都合の良い三段論ぽ………。
 ……………くぅ。

「う〜ん。今日も起きてくれないよう……」
「昨日のヨうに、どてっパラに肘鉄(ひじてつ)クレるってのはドデしょ?」

 ……………くぅくぅ………。

「それでも良いんだけどね〜」
 
 良くねーだろ。
 ………なにやら物騒な事、言ってやがる。
 昨日の痛みで目が覚めた。
 だが、あと5分。
 あと5分だけ寝たいのだ。
 この布団でのまどろみときたら……天使の胸に抱かれたようじゃないか。

「本当に痛そうだったから、ちょっと気が引ける〜」
「構いマセん♪ やっちマイまショう♪」

 ………………てめー、この薄胸ユニットが。
 乳がでかくなるまで揉み倒したろか?
 とかなんとか言いつつも、布団から離れない俺。
 徐々に危険度は上がって行く。
 しかし!
 対空装備は万全なのさ♪
 腹に装備した、枕一式。
 はっはっはっ。
 同じ轍は踏まんのだよ、緋那君。

「う〜。今日は、ちょっと……」
「じゃア、どうシマしょ?」

「レイナさんは、脚の方に回ってください〜」

 ………………何企んでやがる、この小娘ども。
 あ、レイナは俺より年上なのか……………って!

「れ、レイナさん! ふ、布団めくっちゃ駄目!」
「………何故デス〜?」

 いきなり俺の脚もとの布団が消失した。
 すーすー。

「そ、それはその………」
「アア。男のジジョウですネ♪」

 そんなものは、ねー。
 だが……まあ………見られたら困るのも事実。
 朝から衝撃映像は不味いだろ。
 小娘どもの教育上。

「で、ドしましょ?」
「お兄ちゃんの右足首を持って、左膝の上に重ねてください♪」
「はいデス〜〜♪」

 お?
 おお?

「そしたら今度は、足の間に腕を入れて……そうそう。そのまま右足首を掴んでください♪」

 おおお?

「……………こうデスか〜?」

 な、なにやら、暖かくてふかふかして良い匂いだよ。
 じゃなくて。
 俺の足が、奇妙な方向に折り畳まれていく。
 だが……痛みは無いな。

「そうです♪ そのまま左手で、左膝を掴んでください♪」
「ハイハイ〜♪」

 緋那は的確に指示しながら……おお!?
 く、首筋に、緋那の太もも♪
 俺の両腕をコンパクトに折り畳みながら、暖かい太ももが絡み付いてくる♪
 己の二の腕で頚動脈が窮屈だが、そんなことはどうでも良かった。
 思わずこの間の、緋那の全裸がまぶたの裏に思い浮かんで……。
 あ、暴れアニマル、光臨!
 降臨でも可。

「じゃそのまま、右側に転がるようにして、立ち上がって下さい♪」
「ハイハイハイ〜♪」

 いや、既に立ってます♪
 幸い布団は腰を隠してくれているので、朝からえげつないモノを見せ無くても済むが……。
 って!?

「よいしょ♪」
「こらショ〜♪」
「ぐぼぉぉぉ!?」

 全身が雑巾のように絞られる!?
 しかも、両腕両足とも固定されてるので、脱出方法無し!?
 瞬間、脳に送られる血流が止まり、一気に目の前がレッドソックス………………。
 ………レッドソックス………って……………なんだっけ?
 ……………………。

「れ、レイナさん! そっち左!」
「エ? 緋那チャンの、お箸をモツ方向に、タッたんデスが〜?」
「緋那の右じゃなくて、レイナさんの右〜!」
「コレはシッケイ♪」

 ………ど、どうでもいいから……………は、離して……。
 爽やかな朝の光の中、天に召され様としている俺。
 産みの母親との面会も可。

「これじゃお兄ちゃん、死んじゃうよう〜」
「そう言えバ、土気色にナッテきてマス♪」
「え………? きゃぁぁぁ!」

 頭の中で、綺麗なテノールが鳴り響く。
 わ〜わ〜ってな感じの。
 荘厳な別れのシーンだ。
 さぞや観客も泣くだろう。












                           第二部





                    第十一話   『未だ見ぬ安息の地』














「ご、ごめんね〜。お兄ちゃん……」

 ………もくもく。
 猫耳を揺らしながら、制服の緋那が謝ってくるが無視。
 制服にエプロンってのも、俺的にナイスなのだが、それでも、無視。

「ご、ゴメンなさイ、大河サン〜」

 ………もくもく。
 フリフリのエプロンドレス―――何のつもりだ?―――のレイナもリボンをピコピコさせて謝るが、コレも無
 視。
 もくもくもぐもぐ。
 二人の情けない顔も見ずに、黙々ともぐもぐする。
 う〜ん。
 朝飯は美味いのに、幸せな気分にならないのは何故だろう?

「異国の地デ、右も左もワカらないんデス〜」

 その表現は違うだろ。

「ごめんね〜。緋那がちゃんと説明しなかったから……」
「そうじゃねーだろ!」

 思わず突っ込んでしまった。
 瞬時に緋那の猫耳がピコンと立つ。
 レイナのリボンは、しおしお〜と寝ていった。
 いつか必ず分解して調べる!

「謝るポイントは、そこじゃねー」
「だ、だって……」

 両手両足が極められ、さらに上半身と下半身が泣き別れに成るほど、良い極枝(きょくし)だった。
 己の身体ながら複雑過ぎて、どこがどう曲がってたかさっぱり解らん。

「昨日はエルボードロップだったから……今日は痛く無いようにジャベで……」
「充分痛いわ!」

 対空装備が、全く役に立たなかった。
 俺の予想を遥かに上回るスキンシップだ。
 昨日の夜までは、わりとしょんぼりしてやがった癖に……。

「大体、なんだよそのジャベって」

 思わず習いたくなるような極枝だった。
 レイナに知識が無いから時間が掛かったが、手練二人組みだったら滑るように極められるだろう。

「ルチャドールが使う関節技の総称だよ♪」

 るちゃどーる?
 なんじゃそりゃ。
 新しい大人のオモチャか?

「でもね、知識の無いアナウンサーに掛かると、みーんなメキシカンストレッチって事に成っちゃうの。笑っ
 ちゃうよね♪」
「笑えんわ!」

 知識が無いから、なにをどう笑ったら良いか、さっぱり解らん。

「う〜。お兄ちゃんが聞いてきたのに……」

 緋那がお玉を持ったまま、うなり始めた。
 ま、確かに聞いたのは俺だが……。
 さっぱり理解出来ん。
 やっぱり、ネタなんか振るんじゃなかった。

「問題はそこじゃねーだろ。起こし方を考えてくれって言ってるんだ」
「………起きない方に………問題がある………そう思うわ」

 ………………………。
 さっきから無言で丼に顔を突っ込んでいた蓮華が、ぼそりと呟いた。
 ただでさえ迫力の有る呟きなのに、台詞が丼の中で反響して非常に怖い。

「大体………どこの魔王様なのかしら? ……緋那に………起こしてもらおうなんて」

 なんで魔王?
 丼越しに蓮霞の瞳が鋭く光る。
 ………殺るか?

「別に頼んだわけじゃねーだろ」
「……………良い度胸ね……………」

 こ、怖い。
 光った瞳が、さらに光量を増して行く。
 怖いが……ここで引いては、『伊賀崎』の名が廃る。
 廃るほど立派な名前ではないが。

「お、おねえちゃん! ひ、緋那気にしてないから……大丈夫♪」

 お垂れたの間に発した殺気が解ったのか、健気にも緋那が無理矢理笑った。
 その無理矢理の笑顔が痛ましい。
 てゆーか、わざとらしい。

「緋那チャン………(しいた)げらレテも、我慢してるんデスね〜」

 …………虐げた覚えはねー。
 なんのつもりかレイナは、エプロンドレスの裾で目じりなど擦っている。
 別なところコスったろか?

「緋那………貴方って子は………」

 俺、悪者かよ。
 あんで朝から、こんな小芝居に付き合わされてるんだ、俺?

「緋那………緋那………笑えるよ、ほら♪」
「緋那チャン………」
「………………緋那………」
「蓮霞お姉ちゃん………レイナさん………大丈夫………大丈夫だよ……えへ♪」
「緋那……………そうよ………泣いちゃ駄目………」
「泣いたラ、ひまわりサンに………ひまわりサンに……笑われチャイまス〜………」

 テーブルの上で手を取り合う姉妹プラス従業員を尻目に、湯のみに残った最後のお茶を飲み干した。
 あー気分悪い。
 ずずずっ。
 お、このお茶、美味いな。




「大河君。ひなぽん。もうそろそろ時間じゃないのかい?」

 親父が腰を曲げて食堂に顔を出した。
 自分のサイズを考えないで家など建てるから、こーゆー事になる。

「あ、ほんとだ! お兄ちゃん、急いで!」

 ……………………。
 食堂にぶら下がっている時計を見てみる。
 五月六日。
 AM。
 8:00。

「……………………ふむ」
「ど、どうシテ、呆けてマスか、大河サン?」
「いや、なんの時間かと思ってな」
「学校だよ、がっこう!」

 ………………冗談じゃなかったのか。
 仕事に行って五年。
 中等部すら一年しか行ってない俺が、なんで高等部の三年?
 いくら『百地』の力が有るとはいえ……そりゃーねーだろ。
 ま、だからって中等部の二年からやり直せって言われても、それはそれでアレだが。

「………やっぱ行くのか」
「制服に着替えておいて………言える台詞とは思えないわ………」

 飯粒を頬につけたまま、蓮霞が呟く。
 ま、そうなんだけどよ。
 ふつー、そこには突っ込まないだろ?

「お兄ちゃん………やっぱり行きたくないの?」
「………」

 当たり前だっつーの。
 なんで今更学校になんか、通わなくちゃいけねーんだ。
 どうせ勉強には着いていけないし、俺の将来に学歴が必要だとも思えない。

「大河君は往生際が悪いなぁ」

 親父は苦笑しながら、黒の学生バッグを突き出した。
 だがあの中に、勉強道具は何一つ入っていないのを、俺は知っている。
 苦無(くない)だの鉤付き組紐だの、そんなんばっかりだ。
 ちなみに、(みさご)は脛に装着してある。
 上着の裏だと、なにかと不便だ。
 学園でズボンを脱がなくちゃいけない状況ってのは、そんなにも多くないだろう。
 上着だと、脱ぐたびにいちいち移動させなくちゃいけなくなる。
 こ−ゆー細かい気遣いが、命を明日に繋ぐのだ。

「学校くらいは行っておきなさい」
「その学校に行く時期に、出稼ぎにやったのはどこのドナタ様だぁ?」

 口端に嫌味を込めて呟いてみる。
 だが親父は気にした風もなく、豪快に笑った。

「はっはっは。僕と『百地』だよ」

 威張んな、笑うな、胸張んな。

「その僕と『百地』が、再び学園に君を通わせる。筋の通った話じゃないか」
「……………………」

 なんか……納得できそーな、出来なそーな……………。

「お兄ちゃん、いこ? お弁当も作ったんだよ?」

 弁当なんかに釣られるか!
 緋那が大きなポーチを揺さぶった。
 あの中に弁当………。
 緋那の料理は美味い。
 ……………つ、釣られないもん。

「しょうがないな。大河君。学園に通ったら、お小遣いをあげよう」

 うっ………。
 か、金で俺の心が動かせるか!
 動かせる………かぁぁ!
 ……………安定収入、か……………。
 ………い、いくら位かな?

「いまノハ、かなりキキましタ♪」

 ………。
 にこにこしたレイナを、思わず睨み付ける。
 てめー………『読んだ』な?

「ちなみニ……やってないデスよ。顔見りゃ、解りマス♪」

 ………んじゃなんで、俺の心との会話が成立してんだよ。
 ブスッとした表情を浮かべながらも、内心ホクホクの俺。
 学園に通うだけでまとまった金額が貰えるなら、こんなに美味しい事は無い。
 じゃないと、アルバイト並みの『仕事』を捜さなくちゃいけない……。
 ………まてよ。
 俺の親父は、学園に通う程度の事で金を出すような、甘い親父だったか?
 五年間も『仕事』に出しておいて、五万円しか出さない親父だぞ。
 ……………なんか裏が有る。
 バッグの中に詰められた、忍具一式?
 通うだけで報酬?
 ………『仕事』か。
 そう考えれば、合点がいく。
『百地』の影響の強い、学園で………。
 一体何があると……………。

「……………ぴちぴち………」

 ………いう………のか………。
 蓮霞の呟きが、俺の嗜好を邪魔する。
 そのかーし、他の妄想が頭に流れこんできた。

「………ぴちぴち女子………わさわさ………女教師………うはうは………」
「さあいこうか、緋那君♪」
「わっ!? いきなり行く気になった?」

 呆れ顔の家族を尻目に立ちあがって、親父の手からバッグを奪い取る。
 蓮霞に乗せられるのは非常に悔しいが、まあそれはそれでよし。
 わさわさって表現が気に入った。
 女の子がわさわさ………。
 わさわさしてくれんのか?
 さわさわしても、いーんだろうか?

「大河サン……サイテー」
「自分で………炊き付けといてなんだけど………情けないわ………」

 うるせー。
 俺の頭の中は既に、明るい未来で一杯なのだ。
 親父の脇をすり抜け、玄関に向かって………。

「(大河……気を許すな)」

 ………………ぐぅ。
『楯岡道座』の秘匿話術、か。
 親父の眼球が、一定の動きでメッセージを伝えてくる。
 俺じゃなければ見破れない、その高速の動きは………学園に通うのも、遊びじゃない事を告げていた。
 盛り上がった気分が、一気に鎮火されたぜ。









「おはよー♪」

 ……………………。

「なによ! 挨拶くらいしなさいよ!」

 朝から不機嫌だ。
 目の前の女は、腰に手を当てて凄んでいる。
 潮風に揺れるポニーテイルがふさふさ♪
 わさわさでも可。

「あ、静流お姉ちゃん♪ おはよーございます♪」
「ん〜♪ 緋那は良い子ね〜♪」

 自分の胸に飛び込んできたネコ耳娘の頭を、かいぐりかいぐり愛撫してるポニー娘。
 ああ、あの胸、飛びこみてぇ………。
 静流の胸は、なかなか居心地が良い。

「迎えに来てくれたの?」
「うん。とらが最初からごねるとしょうがないんで、叱りに来たの♪」

 何勝手な事、言ってやがる。
 もう既にごねた後だっつーの。

「そ、そうなんだ………。康哉さんもおはよう御座います♪」

 緋那は静流の胸の陰から、後ろでブスっとして立っている男に笑いかけた。
 俺と同じ、青色の制服を着ている男。

「ああ。おはよう、伊賀崎」

 石川五右衛門の直系子孫にして、静流の守護者。
 石川康哉だ。
 康哉は俺に目もくれず、両脇差しの忍刀(にんとう)の柄に手を添えながら……。

「静流様。そろそろ時間です」
「あ、うん」

 と、きやがった。
 気分の悪いヤローだ。
 ………忍刀(にんとう)

「………おい、康哉」
「………………」

 無視かよ。

「康哉」
「……………」

 俺と康哉の挙動を、抱き合ったまま見詰める静流と緋那。
 緊張感が伝わっている。

「石川康哉く〜ん。お返事しなさい〜♪」
「……………………」
「康哉く〜ん?」
「……………………」
「じゃないと幼少の頃、薫子(かおるこ)さんに何されたか、学園で有る事無いこと喋りますよ〜♪」
「なっ! き、貴様だって色々されたろうが!」
「俺は逃げたもん♪ 『五遁の大河』の名は、伊達じゃないのさ」
「貴様ぁ! 自分だけ逃げ遂せるとは、卑怯だぞ!」
「いーじゃん。気持ち良かったんだから」
「気持ちなど良くない! あの屈辱、貴様も味わってみろ!」

 あの屈辱ってどんなんだよ?
 どんなんかは解らんが……。

「くっ! ………あ、あの屈辱………」

 そうとう屈辱……。

「お、思い出しただけでも………………くぅ!」

 だった……みたいだな。
 何したんだ、あの人?
 薫子さんとは俺達の先輩忍者にあたる人で、主に望月のセクハラ担当だ。
 女性の胸と、男の股間を揉むことを生き甲斐としているヘンな人。
 薫子さんは『百地』の女忍軍『千代女(ちよめ)』と呼ばれる集団の一員で、『女』を武器にすることが多い。
 様々な衣装を着こなし、時代と個人のニーズに合った扮装を得意とする、Hな集団だ。
『百地』系の若い男は、よく実験台にさせられた。
 ヤラしてくれそーで、絶対にヤラせない、恐ろしい集団だった。

「………って、康哉」
「……あの時………俺は………………」
「正気に戻れ!」

 康哉の背中を、忍具の入ったバッグでド突く。

「ぐはっ!?」

 中に入ってる苦無(くない)とか刺さらないかな? ………なんて思いながらの一撃。
 あまりの衝撃に、康哉が前のめりになった。

「き、貴様、何をする!?」
「………静流達、いねーぞ」
「………………………」

 迎えに来たはずの静流。
 連れていってくれるはずの緋那。
 その両名は、もうどこにも居なかった。

「……………………」
「……………………急ぐぞ、大河」

 他に言うこと、ねーのかよ。







「で、でな、康哉」
「………何だ?」

 俺達は、静流の後を必死に追いかけていた。
 康哉の説明に寄ると、学園まではこっからバスで10分。
 既にバスには乗り遅れているらしい。

「お、お前………そ、その忍刀(にんとう)………」
忍刀(にんとう)が……どうした?」

 故に、バスに追いつくまで走らなくてはいけないのだ。
 朝のラッシュで道が混んでいるとはいえ、バスに走って追いつくのはなかなかしんどい。

「……が、学園に……そんなもん………も、持ちこんでも………いーんかよ?」
「許可は取ってある。何の問題も無い」

 思わず息も切れる。
 バスに走って追いつこうってんだからな。
 流石、同年代最高スペックと言われた康哉だ。
 息も乱さず、黙々と走っている。

「そ、そうじゃねーだろ………な、なんの為に……持って行くんだ?」

 ま、俺の息切れも、演技だけどよ。
 己のスペックの高さを悟られるわけにはいかない。
 例えそれが『百地』の石川康哉であっても。
 幼馴染であっても、康哉は所詮『楯岡』じゃない。
 無論静流も。
 牙を折る時が来たら、折らなくてはいけないのだ。
 その時まで、油断してもらった方が都合が良い。

「………静流様の乳を揉もうとするような不埒(ふらち)な輩を、斬り捨てるためだ」

 おー怖っ。
 まだ根に持ってやがるのか。
 もっと凄いコトしたなんて知られたら、マジで斬られるな、こりゃ。
 石川の抜刀術。
 俺でも(かわ)すのは、ちと辛い。
 辛いだけで、(かわ)せないわけじゃねーけど。

「………ご、護衛のわりには………し、静流に振り切られることが……お、多いよな」
「……………………」

 あ、黙っちゃった。
 ゴメンな〜。
 核心突いちゃって♪
 そのまま康哉は押し黙り、黙々と走って行く。
 しょうがないので俺も黙って付いて行く。
 まるで二人は、青い稲妻。
 そ〜ら〜に、あおい、いな〜ず〜ま〜ってか。
 なかなか良いシチュエーションだ。
 片方はイライラしてるけど♪







「着いたぞ」
「や、やっとかよ………」

 康哉の台詞と同時に立ち止まる。
 足元では、アスファルトの上に白煙が上がっていた。
 また、靴底減っちまうな、こりゃ。
 目の前には、停留所で止まっているバスが有った。
 これでバスに乗ることができる。
 走るのは苦手じゃないが、嫌いなのだ。
 ………って?

「康哉?」
「何だ?」
「みんな降りてきてるぞ?」
「当たり前だ。学園だからな」

 バスからは、青い制服がポロポロと生み出されている。
 バス猫の産卵。

「てことは………ここ、学園?」
「そうだ」

 横を見ると………灰色に染まった、巨大な校舎。
 何のつもりか、デカデカと看板が上がっている。
『いらっしゃいませ♪ 喰代(ほおじろ)学園へようこそ♪』
 ……………センス、まるで無し。
 誰が付けたか知らんが、俺んちの親父と通じるものが有るな、こりゃ。

「あ〜お兄ちゃん♪」

 バスから降りてくる一団の中から、猫の耳が飛び出してきた。
 人の波に隠されて、耳しか見えない。
 ああ、なるほろ。
 身長低いから、あーやって耳で判別するんだな。
 ……………本当にそうか?

「間に合ったんだね〜。凄い凄い♪」

 緋那が俺達の元に駆け寄ってきた。
 俺を置き去りにしたわりには、実に晴れやかな笑顔だ。

「そうじゃねーだろ。なんで俺を置いて行く?」

 思わずグレて、康哉と二人で街に出てエロ映画でも見ようかと思ったぜ。
 ま、康哉がそんなコトするとは思えないが。
 おなにーとかすんのかね、コイツ?

「え〜。だって〜」

 だってじゃねぇ。

「あのまま、とらと康哉が喧嘩してると、あたし達まで遅刻しちゃうでしょ?」

 緋那の後ろから赤いポニーテイルが現れた。
 静流も、緋那同様、実に晴れやかな笑顔だ。

「いや、そこは止めろよ」
「止めても聞かないの、知ってるしさ♪」

 ………………確かに。
 幼馴染だけあって、お互いの行動パターンは読みきっている。
 五年も離れてたのにな。
 成長してないんだが、成長してないように見せかけてんだか………。
 お互い。

「静流様。そろそろ中に入らないと……」
「あ、うん。そうだね」
「緋那もいかなくちゃ〜。今日、日直なんだ〜♪」

 なんで嬉しそう?
 てか………にっちょくってナニ?

「お兄ちゃん、静流お姉ちゃん。お昼、一緒にしようね〜♪」
「うん。待ってるよ♪」
「……………」

 昼飯まで一緒かよ。
 できれば、美女に囲まれて食いたいなぁ。
 わさわさと。

「康哉さんもよろしかったら、一緒しましょう〜♪」

 そういって緋那は走り去って行った。
 人の波の中、ネコ耳だけがピコピコ揺れている。
 なんだかなぁ。

「……………あ、ああ」

 なにぃ!?
 こ、康哉が………。

「あ、あの無粋の塊のような康哉が………て、照れてる!?」
「……………貴様………」

 あ、声に出しちゃった。

「もう、とら〜。康哉もいちいち突っかからないの」
「……………済みません」
「す、素直だ。………あの康哉が、素直に………」
「貴様ぁ!」

 康哉が忍刀(にんとう)に手を掛けた。
 石川の抜刀術。
 どちらが『猫爪(びょうそう)』で、どちらが『熊爪(ゆうそう)』だか解らんが……。
 まずいな、こりゃ。

「康哉〜? あたしの言うことが……」
「………済みません。ですが………一度で良いから、斬らせてください」

 駄目だろ。
 一度二度って問題じゃない。

「まあ、一回だけだよ?」
「おい!」

 なんで爽やかな転校初日、ぶった切られなきゃいけないんだ!?

「承知!」
「すんな!」

 どいつもこいつも………。
 結構、面白かったな、今の会話。

「まあ、斬るのは後にして。あたし、とらのこと職員室まで送って行くから、先にいってて」

 後から斬られるのか、俺。

「そんな静流様がわざわざ」
「いーの。ほら、急いだ急いだ♪」

 そう言うと静流は、康哉の背中を押して、後門の方に送り出した。
 何か言いたげな康哉だったが、渋々静流の言うことに従って歩き出す。

「なー静流」
「ほら急いで、とら。もうすぐホームルーム、始まっちゃうよ?」

 校舎に備え付けられた大時計を見上げると、八時二十分。
 確か八時半開始だったはず。

「ほらほら急いで。職員室で挨拶しなくちゃいけないんだから♪」

 なんで嬉しそう?
 まあ、ここで逆らってもしょうがない。
 俺も康哉も、静流には弱いよな、ホント。
 別に『百地』だからって訳じゃなくて……。
 昔っから、コイツには敵わない。

「ん? どしたの?」
「なんでもねーよ。ほら、案内してくれよ」
「うん♪」

 ホント、敵わない。







「おはよう御座います、静流様〜♪」
「おはよう御座います〜♪ 今日もお綺麗で♪」
「静流様〜♪」

 ………………なんだこりゃ。
 廊下で出会う女生徒、女生徒。
 全てが静流に挨拶していく。
 しかも目を潤ませて。

「おはよう」

 何を勘違いしたか静流は、非常に優雅なたたずまいで挨拶を返した。
 その途端………。

「きゃぁ!? 私に声かけて下さった♪」
「何言ってんの! 私によ!」
「ブスは黙ってなさい!」
「ブスってなによ! あなたの方が、破滅的な顔してるじゃない!」
「破滅ってどう言うことよ! この世紀末女!」

 ……………パニック起きてる。
 静流は苦笑いを浮かべながら、それでも羨望の眼差しの中を颯爽を歩いていく。
 だ、誰だ、これ?

「な〜、静流?」
「なんでしょう、大河君?」
「……………誰だ、お前?」
「失礼ね〜! 学園じゃ、こう言うキャラなのよ、あたし」

 ぼそぼそっと耳打ちしてくる。

「なんでキャラなんか作ってんだ?」
「………しょうがないでしょ。『百地』なんだから」

 なるほろ。
『百地』は忍者だが、社会的にも影響力の有る良家だ。
 それなりのステータスを演じる必要が有るって事か……。
 大変だねぇ。

「………何、あの男?」
「静流様に馴れ馴れしく話し掛けてるわ!」

 ………あの男ってのは、俺のことか?

「気持ち悪い………変質者よ、きっと」
「見たこと無い顔だもんね〜」
「きっと静流様が捕まえて、連行してる最中なんだわ」
「誰が変質者じゃい!!!」

 思わず群集に向かって叫んでしまった。
 これで悪役、決定。

「きゃあ、変質者がこっち向いたわ」
「怖い〜」
「てめーら………よく聞きやがれ! 俺は伊賀崎大河! 静流とは、愛撫でイキ……………」
「ハッ!!!」
「アボッ!?」

 静流の掌底が俺の側頭部にヒットし、顔面が白い壁にめり込んだ。
 ギャグ漫画なんかで良くあるシーンだが………。
 壁に俺の血痕が飛び散ってるとなると、あんまり笑えない。

「皆さん。それじゃ♪」
「わ〜♪ 流石静流様♪」
「相変わらずお強い〜♪」

 拍手と歓声の中、俺は襟首掴まれて引きずられて行った。
 悪役の上、引き立て役かよ。
 どもならんな。
  





「失礼します」
「………ちわっす」

 静流の後について、職員室に入った。
 中では教師どもが、静流を見て緊張している。
 教師にまで一目置かれてんのか。
 流石『百地』の一人娘。
 この学園の理事が、誰だかは知らんが………『百地』の息がかかってることは間違い無いな。
 じゃないと、俺のことを強引に『転入』させるなんて芸当は出来ないだろうし。
 静流は数歩歩いたかと思うと……。

「おはよう御座います、篠崎(しのざき)先生」

 と、何も無い空間に声をかけた。

「……………?」

 なんだ、なんだ?
 怪しいキャラ作ってるから、頭に寂しさが蔓延したか?
 悲しいなぁ。
 幼馴染が壊れて行く様を見るっての………。

「おはよう〜。静流さん♪ あ、そちらは転入生ですね〜?」
「……………は?」
「そうです。厄介な奴ですが、どうかよろしくお願い致します」
「………………………?」
「はいはい〜♪ 厄介な生徒は、慣れっこですから〜♪」
「………………?」
「あはは♪ それではあたし、教室に行きますので」
「はいはい〜。ご苦労様♪」
「………………………?」
「失礼します」
「ちょ、ちょっと待て静流」
「………なんですか、大河君」

 立ち去ろうとする静流の腕を掴んで、なんとか引きとめる。

「お前の怪しいキャラは後から突っ込むことにして……」
「………うるさいわね。で、なによ?」
「誰と喋ってんだ、お前?」

 俺達の目の前には、誰も存在してない。
 ただ、机が並んでいるだけだ。
 遠巻きに見ている教師に話しかけているようにも見えなかったし………。

「誰って………あたし達の担任の、篠崎先生にだよ?」
「………俺には見えん。寂しいお前の妄想仮想先生か?」
「誰が寂しいのよ!」

 キャラ壊れてやんの。
 静流の叫びに、教師どもがそそくさと荷物を抱えて出て行った。
 無理してキャラ作るから、こういうことになる。

「あの〜〜〜〜?」
「そんな甘えた声出すなよ。後から慰めてやるから………」

 思わず目じりが熱くなる。
 俺の居ない間に、こんなにも寂しい思いをしていたとわ………。

「学園でセクハラしないで! いい加減にしなさいよ、とら!」

 ………学園じゃなければ良いのか?

「あの〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜?」
「ふざけてないで、挨拶しなさいよ!」
「誰にだよ!」
「篠崎先生にでしょ!」
「あ、あの〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜?」
「だから、どこに居るんだよ!」
「ここよ!」
「ふにゃ!?」

 静流の腕が下に伸びて行ったかと思うと、なにかを鷲掴みにして戻ってきた。
 ピンク色の物体。
 ピンクのスーツに、ピンクのパーマのかかったセミロング。
 襟首掴まれて、大人しくなっている。

「この人が、篠崎先生よ!」
「………………………なるほろ」

 先生にその扱いは、どーかと思うぞ?
 篠崎先生と呼ばれたそのピンク色の生物は、涙目で俺を見上げている。

「解った!?」
「解ったから降ろしてやれ。泣きそうじゃねーか」
「……………くすん」
「あああ!?」

 慌てて静流が、篠崎先生と呼ばれたピンク色の生物を下に置いた。
 途端に俺の視界から消え失せる。
 下を見ると………涙目で見上げる女教師が居た。
 推定で、145cm前後。
 俺との身長差は、約40cm。

「ご、ごめんなさい、みどりちゃん!」
「………うう。慣れっこです〜」

 嫌な慣れ方だ。
 てゆーか、先生をみどりちゃん呼ばわりかよ。
 まあ………みどりちゃんって感じでは有るが。

「じゃ、じゃあ、あたし、教室に戻りますんで!」

 静流は俺にウインクすると、そそくさと立ち去った。

「あんにゃろ………」

 俺にフォローしろって事か。
 いつもの事とはいえ………無責任な奴だ。
 後から思いっきり乳を揉み倒してやる。
 体育館倉庫とかが、好みのシチュエーションだな。

「……………くすん」
「ああ、泣かない泣かない。ほら良い子だから♪」

 ピンク色の髪の毛を、わしゃわしゃと撫でる。
 パーマのかかった髪の感触は、なかなか気持ち良い。
 最近の子供は進んでるよな。
 なんてったって、パーマだもんな、パーマ。

「………あの〜?」
「ん? お兄ちゃんになんでも言ってごらん。飴買ってあげようか、飴?」
「………………みどり、一応、先生なんです〜〜〜〜」

 うん。
 まあ、それは知ってる。
 だが……先生に見えないのも事実。
 緋那と同級生だって言われても信じられる。

「改めて自己紹介を〜〜。三年C組の担任、篠崎みどりです〜〜〜」
「………………伊賀崎大河です」

 よく挨拶できたね〜って台詞を、なんとか飲みこむ。
 これ以上苛めると、本当に泣きそうだからだ。

「じゃ〜あ〜、クラスに案内するんで、着いてきてください〜〜〜」
「………はい」

 篠崎先生………みどりちゃんは、必死に手を伸ばして、机の上から出席簿を取る。
 この机の高さは………1m程度だが、なんだか奥行きがあって辛そうだ。

「取りましょうか?」
「大丈夫〜〜。ほら取れた♪」

 あ〜〜、偉い偉い♪
 一人で出来たんだね♪
 ………………………困ったもんだ。
 なんかこう、父性愛ってゆーの?

「じゃ、いきましょうか〜〜〜?」
「はい」
「………………伊賀崎く〜ん?」
「あんでしょ?」
「そ、その差し出した手は、な〜に〜?」

 みどりちゃんは、俺の手をじっと見詰めている。
 ………………思わず手を差し出してしまった。
 迷子になりそうだったもんで。
 緋那よりも『お兄ちゃん感』を煽る担任。
 大丈夫なのか、この先?









「でね〜。ここが今日から、伊賀崎くんのクラスなのです〜〜〜」

 みどりちゃんが胸を張って、手を伸ばした。
 身体のバランス的には、結構胸は有る方だ。
 いや、むしろ、デカいんじゃないかな?
 ロリ顔で巨乳。
 さぞかし大きなお友達が喜ぶことだろう。

「はあ、そっすか」
「………疲れてる〜〜〜?」

 疲れてる。
 階段で転びそうになったり、視界から消えて踏み潰しそうになったり………。
 気を使うこと、この上ない。

「大丈夫よ〜〜。とっても仲良しのクラスだから〜〜〜、緊張すること無いのよ〜〜〜〜」
「はあ、そっすね」

 俺の転入先は、初等部か。
 気遣ってくれるのは嬉しいが、緊張して疲れている訳じゃない。

「じゃあ〜、入るね〜」
「お好きに………」

 もう既に、疲労困憊だ。
 朝から走らされ、変質者呼ばわりされ、間延びした小人の担任。
 どう頑張っても、明るい未来など見えやしない。
 蓮霞の嘘吐き。
 何が、わさわさでうはうはだ。

「今日は皆さんに、嬉しいお知らせがあります〜〜〜〜」

 ぬ?
 ……いつのまにかみどりちゃんが視界から消え………。
 ―――いや、慣れたが―――クラスの中からざわめきが起こった。
 よし、ここはひとつ………。
 恰好良い登場で、己の存在をアピールするか………。
 それとも、ミステリアスな印象を植え付けるか。

「男の子が転入してきました〜〜〜〜♪」
「チッ。男かよ」
「なんだ、残念」

 ………いきなり失望されてるし。

「みんな、あたしの……古い知り合いなの。よろしくして上げてね♪」

 ………静流か。
 やぱり同じクラスなんだな。
『百地』の力、恐るべし。

「馬鹿なので、あまり構わないように」

 ………康哉。

「え、静流の知り合いって事は………忍者なの?」

 聞いたことの無い女子の声。
 ちょっと期待が膨ら………。

「うん。そうなの」
「へぇ〜」
「海岸沿いのペンション有るでしょ。あそこの息子なんだよ♪」
「じゃあ、一年の緋那ちゃんの、お兄さん?」
「そう言うことだね♪」
「馬鹿で変質者なので、構わないように、みんな」

 ………いきなり全部ばれてるし。
 てゆーか、康哉に変質者呼ばわりされる覚えはねー。
 静流の尻に引っ付いて離れないくせに。
 そーゆーのストーカーっていうらしいぞ、康哉。
 夕べ、『警視庁60時間TV』とかってので見た。

「じゃあ、入ってください〜〜〜〜♪」

 みどりちゃんがドアの影から顔をピコンと出した。
 この状況で、どの面下げて入っていけるってんだ!
 だがまあ………入らないわけにはいかない。
 諦めて、好奇心で満たされた教室に一歩踏み込む。

「……………………あっ」

 教室に入って辺りを見渡す。
 入っていきなり、康哉の仏頂面。
 窓際、一番後ろの席に、笑顔の静流。
 その隣りに……………口を開けて立っている女。
 眼鏡をかけて、ショートヘアのその女に………見覚えっつーか………面影っつーか………。

「やっぱり………イガちゃん!?」

 ………………その呼び名、懐かしいな。
 茉璃ねーさんとちょっと似ている緑色のショートカットは、昔と同じ印象が有る。
 あの頃は眼鏡をかけてなかった気もするが………。
 それ以上に………なんか思い出さなくてはいけないことが………有った気が。

「忘れちゃった? わたし、わたし♪」
「な、奈那子(ななこ)………座りなさいって」
「……………ななこ?」

 霞の掛かった記憶の向こう、なんとなく思い出してきた。

「もしかして……………木バナナか!?」

 本名は確か、木羽(きば)奈那子。
 静流と同じく、この地では有名なお嬢様だ。
 といっても、忍者の家柄ではない。
 巨大忍具メーカーのお嬢様で、その関係で静流と仲が良かったのだ。
 昔よく、康哉、静流と四人で………

「バナナってゆーなーーー!!!」
「グボッ!」

 あまりの突飛な行動に、飛んできた机を(かわ)すことも出来ず、机と壁の間に顔を挟まれる俺。
 白い壁に、俺の鮮血が飛び散った。
 け、血液が………。
 そ、そういえば………こーゆー女だった………。
 木バナナ。

「あら〜〜〜? 凄い血〜〜〜?」

 ………のんびり解説してんじゃねーよ、みどりちゃん。
 康哉、奈那子、静流、か。
 薄れゆく意識の中でこう思った。
 俺の安息の地は、ここじゃない、と。

「ああ、イガちゃんが、血まみれに!?」
「あんたがやったんでしょ、奈那子」
「………良い気味だ」

 安息の地はここじゃない。
 ここじゃない………はず。








END






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